トゲバカミキリは、日本に広く分布するカミキリムシ科モモブトカミキリ族の一種です。上翅の肩部分に鋭いトゲを持つことが大きな特徴とされています。クリやクヌギなどの枯れ枝によく見られ、夜間に活発に活動する姿が観察されます。


基本情報
| 体長 | 8~15㎜ |
| 分布 | 北海道、利尻島、本州、伊豆諸島(神津島)、佐渡、隠岐、四国、九州 |
| 食草・寄生植物等 | 各種広葉樹およびマツ科 |
| 成虫出現期 | 6~9月 |
観察と撮影後記
トゲバカミキリは、日本全土に分布するモモブトカミキリ族の一種で、肩部の鋭いトゲが特徴です。ブナ科などの枯れ枝で見られ、個人的には触角を含めた姿が蜘蛛に擬態しているように思えます。触角を足に見立てた「8本足」のようなイメージで、写真を撮るようになると採集と違って、観察する時間が長く、いろんな事が気になります。
学名について
トゲバカミキリ/ Rondibilis saperdina (Bates, 1884)
1. 属名:Rondibilis (ロンディビリス)
本種の属名は、以下の分類学的構成に基づいています。
亜属名について: 本種はトゲバカミキリ属の指名亜属に分類されるため、学術的な表記では Subgenus Rondibilis (Rondibilis) となります。
語源: 19世紀のフランスの昆虫学者ジェームス・トムソンによって命名されました 。語源はラテン語の “rotundus“(丸い、円形の)に近い造語と考えられており、本属が属するモモブトカミキリ族の中でも、比較的丸みを帯びた体型や前胸の形状を示唆しています。
2. 種小名:saperdina (サペルディナ)
この種小名は、他のカミキリムシのグループとの形態的類似性に由来します。
語源: カミキリムシ科の別属である “Saperda“(シラホシカミキリ属)に、接尾辞の “-ina“(〜に似たもの、〜のような)を組み合わせたものです。つまり、種小名全体で 「シラホシカミキリ属(サペルダ)に似た姿をしたもの」 という意味になります。
指名亜種である背景: 本種は日本国内において亜種の分化が認められていないため、種小名と亜種名が重なる指名亜種 “Rondibilis saperdina saperdina” として扱われます。これは、1884年にベイツによって記載された際の基準個体群(タイプ標本)の形質が、種全体の標準として維持されていることを示しています。
属名は「特有の体型」を、種小名は「他属(サペルダ)への類似」を強調した構成となっており、当時の分類学者が本種を同定する際に着目した形態的特徴が色濃く反映されています 。
3. 命名者と年号:(Bates, 1884)
命名者: Henry Walter Bates(ヘンリー・ウォルター・ベイツ)。19世紀のイギリスの博物学者であり、アマゾン川流域での調査に基づき、擬態の一種である「ベイツ型擬態」を提唱したことで世界的に知られます 。記載文献: “Longicorn Beetles of Japan.” Journal of the Linnean Society of London, Zoology, 18: 205–262. (1884)
和名の由来
トゲバカミキリ: 「刺羽(トゲバ)」の意味。上翅(翅、羽)の肩の部分に鋭い棘状の突起があることから、その形態的特徴を直接的に表現した名称となっています。

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