ウスバカミキリは、日本全土に広く分布するカミキリムシ科ウスバカミキリ亜科の一種です。カミキリムシの中でも大型の部類に入り、和名の由来ともなった薄く透き通ったような翅(上翅)と、力強い複眼が特徴です。広葉樹や針葉樹の朽ち木がある雑木林などに生息し、夜間に活動するため、灯火(外灯)にもよく飛来します。


以下は上記の動画となります。
基本情報
| 体長 | 30~55㎜ |
| 分布 | 北海道、礼文島、奥尻島、本州、伊豆諸島(大島、新島、神津島、三宅島、御蔵島)、飛島、粟島、佐渡、冠島、隠岐、四国、九州、対馬、壱岐、五島列島(福江島)、下甑島、種子島、屋久島、口永良部島、トカラ列島(口之島、中之島、諏訪之瀬島、平島)奄美大島、徳之島、沖縄島 |
| 食草・寄生植物等 | 幼虫:ブナ科(クヌギ、コナラ)、ヤナギ科、スギ、マツ科など多種多様な広葉樹・針葉樹の生木や朽ち木 成虫:樹液に集まることもあるが、基本的には後食しない |
| 成虫出現期 | 5~9月 |

観察と撮影後記
和名である「ウスバ」=「薄刃」。実際にその姿を間近で観察すると、なんと絶妙な命名だろうと感心させられます。他のカミキリムシのような厚く硬い上翅とは異なり、どこか繊細でしなやかな質感は、まさに「薄い刃」を連想させ、大型種ながらも独特の気品を漂わせています。
ウスバカミキリ亜科の仲間は、その夜行性ゆえに山間の外灯下などで見つける機会が多いものですが、私の観察記録も本種までとなりそうです。なお、分類上近いニセクワガタカミキリ亜科については、その希少性と遭遇難易度の高さから、最初から探索を断念しております。
学名について
1.属名: Megopis (メゴピス)
ギリシャ語の「megas(大きい)」と「ops(眼)」に由来し、本種の特徴である大きな複眼を指しています。
2.種小名: sinica (シニカ)
「中国の」という意味のラテン語です。東アジアに広く分布することを示唆しています。
「中国の」となった二つの理由
まず、19世紀、ヨーロッパの博物学者たちにとって、日本や朝鮮半島、中国大陸はまとめて「極東(Far East)」や「シナ(Sina/China)」という大きな枠組みで理解されることが多くありました。この学名を命名したイギリスの昆虫学者アダム・ホワイト(Adam White)が、標本の産地を広義の「中国周辺(東洋圏)」として捉え、種小名に sinica を採用したと考えられています。
次に模式産地(タイプ産地)の問題があります。学名を決める際、基準となる標本(ホロタイプ)が採集された場所を「模式産地」と呼びます。ウスバカミキリの原記載(1853年)において、ホワイトは中国(Shanghai)産の個体を基に記載しました。後に日本に生息しているものも、この sinica と同一種であると判定されたため、日本にいる個体も自動的に「中国の」という意味を持つこの学名で呼ばれることになったのです。
3.命名者と年号: (White, 1853)
19世紀のイギリスの動物学者、アダム・ホワイトによって記載されました。
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