チャイロヒメコブハナカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科ハナカミキリ族の一種です。褐色で前胸背板に一対の隆起(こぶ)があるのが特徴とされています。カツラの朽ち木や生木の周辺で見られます。


基本情報
| 体長 | 11.1~14.5㎜ |
| 分布 | 本州(東北地方南部~岐阜県東部) |
| 食草・寄生植物等 | カツラ |
| 成虫出現期 | 6~8月 |
観察と撮影後記
本種はカツラという特定の樹木に強く依存するため、その生息ポイントの特定が撮影の鍵となります。30年前に確認していたカツラの木が消失して以降、各地でカツラを見かける度に本種の姿を探し続けてきました。今回、「あのカツラの木」という具体的な情報をいただいたことで、ようやくその姿を捉えることができました。
学名について
チャイロヒメコブハナカミキリ基亜種 / Pseudosieversia japonica japonica (K. Ohbayashi, 1937)
1. 属名: Pseudosieversia (プセウドシエベルシア)
この属名は、ギリシャ語の接頭辞 “pseudo-“(ψευδής: 偽の、〜に似た) と、既存の属名である “Sieversia” を組み合わせたものです。Sieversia 属は、19世紀の昆虫学者ヴィクトル・フォン・モチュルスキーによって、ロシアの博物学者ヨハン・アウグスト・カール・ジーバース(Johann August Carl Sievers)に献名された属です。本属が Sieversia に近縁でありながら異なる特徴を持つことを示しています。
2. 種小名・亜種名: japonica japonica (ヤポニカ・ヤポニカ)
語源: ラテン語で「日本の」を意味する形容詞です。
指名亜種の背景: 本種は日本(本州・四国・九州)に分布する基亜種 japonica の他に、大陸側に別亜種が存在することから、分類学上のルール(新基準標本に基づく原記載)に従い、種小名と亜種名が重なる「指名亜種(nominotypical subspecies)」として表記されます。
3. 命名者と年号: (K. Ohbayashi, 1937)
命名者: 大林一夫 (Kazuo Ohbayashi)。20世紀の日本を代表するカミキリムシ研究家であり、多くの新種を記載しました。記載文献: “Descriptions of two new longicorn beetles from Japan.” Transactions of the Kansai Entomological Society, 8: 5–8. (1937).
和名の由来
「チャイロ(体色の褐色)」「ヒメ(小型の)」「コブ(前胸背板の隆起)」「ハナカミキリ(亜科名)」という、本種の形態的特徴を的確に捉えた名称となっています。
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