シラフヒゲナガカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科フトカミキリ亜科ヒゲナガカミキリ族に分類される昆虫の一種です。大型のカミキリムシであり、黒褐色の地色に「白斑(しらふ)」と呼ばれる白い斑紋が不規則に散らばり、体長を大きく超える非常に長い触角を持つ点が特徴です。主に標高の高い山岳地帯の針葉樹林に生息し、モミ、ツガ、トウヒ、エゾマツなどの倒木や立ち枯れ、あるいは伐採木に集まる習性があります。

基本情報
| 体長 | 19~28㎜ |
| 分布 | 本州、四国 |
| 食草・寄生植物等 | モミ属、トウヒ属、カラマツ |
| 成虫出現期 | 7~9月 |
観察と撮影後記
標高が高い場所で見られる本種のような大型のカミキリムシは、その体躯から強い存在感が伝わってきます。
写真は、あえて周囲の環境に溶け込んでいる分かりづらいものを掲載しました(不思議なことに写真では分かりやすく感じます)。自然の中では、背景の樹皮や地衣類に紛れて見つけづらいところに居ることが多く、目視の場合、最初の一頭を見つけるまでは珍品のように感じられるかもしれません。
一度目が慣れてその姿を捉えられるようになると、倒木の上などで静止している個体を観察できるようになります。針葉樹林の静寂の中で、本種と対峙する時間は格別なものがあります。
学名について
シラフヒゲナガカミキリ / Monochamus (Monochamus) nitens (Bates, 1884)
1. 属名・亜属名:Monochamus (モノカムス)
この属名(および亜属名)は、ギリシャ語を語源とする言葉から成り立っています。
“monos” (μονος):「単一の」「一つの」を意味します。
“chamos” (χάμος):「轡(くつわ)」「手綱」あるいは「割れ目」を意味するとされています。
本属の特徴である非常に長い触角や、前胸背板の構造などに由来すると考えられます。
2. 種小名:nitens (ニテンス)
こちらはラテン語に由来します。
“nitens“:ラテン語で「光り輝く」「光沢のある」「洗練された」を意味する形容詞です。本種の体表が放つ独特の質感を表現しています。
3. 命名者と年号:(Bates, 1884)
Henry Walter Bates:19世紀のイギリスの昆虫学者。アマゾン探検や「ベイツ型擬態」の提唱で知られますが、日本の昆虫研究にも多大な貢献をしました。記載文献:Bates, H. W. (1884) “Longicorn Beetles of Japan.” Journal of the Linnean Society of London. Zoology, 18: 205–262.
和名の由来
和名の「シラフ」は、漢字で「白斑」と書き、上翅に散在する白い斑紋(白斑)が、まるでお酒に酔っていない「素面(しらふ)」の斑点模様のように見える、あるいは単に白い斑点があることを指しています。「ヒゲナガ」は、ヒゲナガカミキリ族共通の特徴である、体長よりも遥かに長い触角(髭)に由来します。
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