セダカコブヤハズカミキリ/ Parechthistatus gibber gibber (Bates,1873)

セダカコブヤハズカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科フトカミキリ亜科の一種です。後翅が退化し飛翔できない代わりに、背面が大きく隆起した堅牢な形態を持ちます。山地帯の落葉広葉樹林に生息します。

セダカコブヤハズカミキリの自然写真 枯損木上1
セダカコブヤハズカミキリの自然写真 枯損木上2
アリとセダカコブヤハズカミキリとの対峙
セダカコブヤハズカミキリの自然写真 枯損木上3
2019年5月 山梨県南都留郡

基本情報

体長11.5~19.5㎜
分布本州、四国、九州、対馬
食草・寄生植物等アカメガシワ、ブナ、コナラ、タンナサワフタギ
成虫出現期5~10月

観察と撮影後記

セダカコブヤハズカミキリの仲間は非常に興味深い分布を示しており、愛好家の間でも高い人気を誇ります。

一般的に「セダカコブヤハズカミキリ」の名を冠するものは、基亜種を含め「イワワキ」「ダイセン」「トクサカミ」「ナンキ」「サヌキ」「ツルギ」「ツシマ」「フクチ」「ソボ」と計10の分類群(本州、四国、九州、対馬)に整理されています。しかし、実際には地域ごとにさらに細かな変異が見られ、その分類の奥深さは計り知れません。

詳細な分類学的知見などついては、『日本のコブヤハズカミキリムシ』(むし社)を参照していただければと思います。

学名について

セダカコブヤハズカミキリ/ Parechthistatus gibber gibber (Bates,1873)

1) 属名:Parechthistatus(パレクティスタトゥス)

本属名は、ギリシャ語の「para(〜のそばに、〜に似た)」と、既存の属名の「Echthistatus」を組み合わせたものです。先行して命名された Echthistatus属(中米のカミキリムシのために作られた属名※補足)に近い、あるいは類似したグループであることを示しています。

2) 種小名:gibber(ギッベル)

ラテン語で「せむし(背中が盛り上がった)」「隆起した」を意味する形容詞に由来します。本種の上翅背面がドーム状に大きく盛り上がっている身体的特徴を的確に表しています。

3) 命名者と年号 (Bates, 1873)

ヘンリー・ウォルター・ベイツ(Henry Walter Bates)によって1873年に記載されました。ベイツはアマゾン探検や「ベイツ型擬態」の提唱で知られるイギリスの昆虫学者・博物学者です。記載文献:Bates, H. W. (1873) “On the Longicorn Coleoptera of Japan.” The Annals and Magazine of Natural History, Series 4, Volume 12.

和名の由来

「セダカ(背高)」は、上翅の背面が強く盛り上がっている形状に由来します。「コブヤハズ(瘤矢筈)」は、上翅の末端(翅端)が「矢筈(弓矢の弦を受ける切り込み)」のように二叉に分かれ、そこに瘤(こぶ)状の突起がある特徴から命名されています。

※補足:Echthistatus属(エクティスタトゥス属)

Echthistatus 属は、中米に生息するカミキリムシ科フトカミキリ亜科に分類される昆虫の属の一つです。1862年にイギリスの昆虫学者フランシス・ポルキングホーン・パスコー(Francis Polkinghorne Pascoe)によって提唱されました。

1. 日本の種(セダカコブヤハズカミキリ)との関係

1873年、イギリスのベイツ(Bates)が日本のセダカコブヤハズカミキリを新種記載した際、この中米の属になぞらえて Echthistatus gibber という学名を与えました。

その後、1942年にドイツのブロイニング(Breuning)によって、日本の種は中米のグループとは別属であると判断されました。そこで、Echthistatus に「似たもの、そばに」を意味する接頭辞「para-」を付けた Parechthistatus (パレクティスタトゥス属)が新設され、現在に至ります。

2. 名称の影響

Echthistatus という名称は、アジアに分布する他の「コブヤハズカミキリ族」の属名にも多く引用されており、分類上の比較対象となる基幹的な名前となっています。

Parechthistatus(セダカコブヤハズカミキリ属)Mesechthistatus(コブヤハズカミキリ属)Pseudoechthistatus(シュードエクティスタトゥス属:中国などに分布)

3. 形態的特徴

中米に生息する本来の Echthistatus 属は、卵形で後方に細くなる体型、長い触角、そして前胸背板や上翅に鋭い棘や隆起(瘤)を持つといった、日本のコブヤハズカミキリ類にも共通する独特の造形が特徴です。

セダカコブヤハズカミキリの自然写真
2022年8月 山梨県北都留郡
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