クモマハナカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科ハナカミキリ亜科ハイイロハナカミキリ族の一種です。寒冷地性の種として知られ、主に高標高地や北海道などの冷涼な環境に生息する点が特徴です。亜高山帯~高山帯の草地や林縁、森林内の開けた場所などの花上で見られます。


基本情報
| 体長 | 7~13㎜ |
| 分布 | 北海道、本州 |
| 食草・寄生植物等 | 未知 |
| 成虫出現期 | 6~8月 |
観察と撮影後記
観察個体は花上で活動しており、花粉を上翅に多量に付着させた状態で移動していました。
訪花性のハナカミキリ類では一般的な行動ですが、本種も花間を移動しながら摂食を行っていました。花粉が体表に付着したまま行動する様子から、結果として送粉に関与している可能性は考えられますが、種特異的な送粉関係についての詳細な研究報告は確認されていません。
高標高地の限られた環境下で確認される種であり、出現期には花上で比較的観察しやすい一方、局地的な分布傾向が強いことが知られています。
誰もいない廃業となったスキー場の脇で撮影しました。ちなみに2015年頃は山頂までロープウェイもあり、昼食とビールが飲め、個人的には惜しまれる撮影地です。
学名について
クモマハナカミキリ / Evodinus borealis (Gyllenhal, 1827)
1. 属名:Evodinus (エウォディヌス)
Evodinus は19世紀に設けられた属名で、ハナカミキリ亜科(Lepturinae)に属する小型種群を含みます。語源:ギリシャ語の “eu”(良い、真の)と、ハナカミキリ類を指す “Odin”(または Dinoptera 属に関連する語根)の組み合わせに由来すると考えられています。
典型的なハナカミキリの姿を持つグループであることを示唆しています。
2. 種小名:borealis (ボレアリス)
borealis はラテン語に由来し、「北の」「北方の」 を意味する形容詞です。
語源はラテン語 Boreas(北風の神、ギリシャ神話のボレアス)に遡り、
そこから派生した borealis は「北方に属する」という意味を持ちます。
本種はヨーロッパからシベリア、日本の北海道・本州中部以北にかけて分布する寒冷地性種であり、種小名はその北方系分布を反映した命名と理解されています。
3. 命名者と年号:(Gyllenhal, 1827)
命名者:Leonhard Gyllenhaal(レナート・ギレンホール)。スウェーデンの昆虫学者で、甲虫類の分類において多大な貢献をしました。記載文献:Gyllenhal, L. (1827) Insecta Suecica descripta. Classis I. Coleoptera sive Eleuterata. Tomus I. Pars IV. Cum appendice ad tomos priores. Lipsiae, 761 pp.
備考:学名が括弧で囲まれているのは、記載当時は別の属(Leptura 属など)として発表され、後に現在の Evodinus 属に移動されたことを示します。
和名の由来
由来:和名の「クモマ(雲間)」は、雲が流れるような高い山、すなわち亜高山帯から高山帯を意味します。本種が平地には生息せず、標高の高い山岳地帯に限定して生息することから、その生息環境を象徴する「雲間」の名が冠されました。
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