コブヤハズカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科カミキリ亜科コブヤハズカミキリ族に分類される昆虫の一種です。後翅が退化して飛翔能力を欠いており、上翅に一対の大きなコブ状の突起(瘤)を有している点が最大の特徴です。主としてブナ帯などの冷温帯落葉広葉樹林に生息し、各種広葉樹の枯葉や落枝に集まる習性があります。



基本情報
| 体長 | 14.0 ~23.0㎜ |
| 分布 | 東日本の日本海側に沿うように東北地方~北部フォッサマグナ地域のほぼ全域(関東北部含む) |
| 食草・寄生植物等 | ヤマブドウ、ミズキ、ヤマハンノキ、ユズリハ各種枯れ葉を後食。寄主植物:ヤマザクラ、ブナ、クリ、ナラ類、カエデ類 |
| 成虫出現期 | 8月下旬~11月中旬(低標高) |
観察と撮影後記
コブヤハズカミキリ(基亜種)は、本属の中でも分布域が広く、個体数も比較的安定して確認される。その普遍性から、昆虫愛好家の間では俗に「タダコブ」と呼称されることがある。飛翔能力がないために移動範囲が極めて限定されており、地域ごとに形態の変異が見られるが、本種はその分類上の基部を成す。観察時は、主に食樹の枯葉に潜んでいる個体を見出す手法が一般的である。
学名について
コブヤハズカミキリ / Mesechthistatus binodosus binodosus (Waterhouse,1881)
1. 属名:Mesechthistatus(メセクティスタトゥス)
本属名は、ギリシャ語の接頭辞 “meso-“(中間の) と、近縁の属名である “Echthistatus” を組み合わせた構成となっている。
なお、Echthistatus の語源はギリシャ語の “echthistos”(最も憎むべき、嫌悪すべき) に由来するとされる。
2. 種小名:binodosus(ビノドスス)
ラテン語の “bi-“(2つの、複葉の) と、”nodosus“(結び目のある、コブのある) を語源とする。
本種の上翅に一対(2個)の顕著な瘤状突起がある形態的特徴を指している。
※亜種名も同一(基亜種のため)。
3. 命名者と年号 Waterhouse,1881
Charles Owen Waterhouse (1881) 19世紀のイギリスの昆虫学者。ロンドンの大英博物館(現 Natural History Museum)に勤務し、数多くの甲虫類を記載した。記載文献:Waterhouse, C. O. (1881) On some new South-African Coleoptera, and a new Genus of Cleridae from Madagascar; with descriptions of some new Coleoptera from Japan. Transactions of the Entomological Society of London, 1881: 428.
和名の由来
「コブ(瘤)」は、上翅の背面にある一対の大きな突起に由来する。「ヤハズ(矢筈)」は、上翅の末端部の形状が、弓矢の弦をかける「矢筈」の凹状の形に似ていること、あるいは斑紋の形状に由来するとされる。
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