キスジトラカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科トラカミキリ族に分類される昆虫の一種です。黒地の体に鮮やかな黄色の帯模様(黄条)を持ち、アシナガバチ類に高度に擬態している点が特徴です。ブナ科やカバノキ科などの広葉樹林に生息し、各種の花や、伐採木が集積された土場(どば)などで見られます。



基本情報
| 体長 | 10.2~19.9㎜ |
| 分布 | 千島列島、北海道、礼文島、利尻島、奥尻島、本州、佐渡、隠岐、四国、九州、対馬 |
| 食草・寄生植物等 | 幼虫: クヌギ、コナラ(ブナ科)、カバノキ科、カエデ科などの広葉樹の枯死材 成虫: 訪花性があり、ノリウツギ、リョウブ、クリなどの花の蜜や花粉 |
| 成虫出現期 | 5~8月 |
観察と撮影後記
本種は、その色彩と行動の両面においてハチ類への擬態が極めて発達した種である。静止時のみならず、材上を歩行する際の機敏な動きや、触角を小刻みに振る動作はハチ類のそれと酷似しています。また、頭部前面(顔)、複眼の形状や配置など、ハチ類に似たシルエットを形成する一因となっているようです。
学名について
キスジトラカミキリ / Cyrtoclytus caproides caproides (Bates, 1873)
1.属名:Cyrtoclytus(キルトクリトゥス)
ギリシャ語の「kyrtos(κυρτός:曲がった、凸状の)」と、トラカミキリ属を指す「Clytus」に由来する。前胸背板が強く盛り上がる本属の形態的特徴を示唆している。
2.種小名:caproides(カプロイデス)
ラテン語の「capra(ヤギ)」、あるいは欧州産の Clytus capra という種名に、ギリシャ語由来の接尾辞「-oides(~に似たもの)」を組み合わせたもの。命名者ベイツは、本種が欧州の Clytus capra に酷似していることからこの名を付した。
3.命名者と年号:(Bates, 1873)
Henry Walter Bates: 19世紀のイギリスの昆虫学者。アマゾン探検での「ベイツ型擬態」の発見で知られる。記載文献: Annals and Magazine of Natural History, (4) 12: 193-204. “On the Longicorn Coleoptera of Japan.”
和名の由来
キスジトラカミキリ(黄条虎天牛)「キスジ(黄条/黄筋)」は、上翅に見られる鮮やかな黄色の帯模様を指す。「トラ(虎)」は、トラカミキリ族全般に見られる黄色と黒の縞模様を虎の毛皮になぞらえたものである。
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