カラカネハナカミキリ(Gaurotes (Paragaurotes) doris)は、日本に広く分布するカミキリムシ科ハナカミキリ亜科の一種です 。 上翅(鞘翅)に強い金属光沢を持ち、個体によって緑色、銅緑色、暗赤色と極めて豊富な色彩変異を示す点が最大の特徴です 。 主に山地の広葉樹林に生息し、日中に各種の花を訪れるほか、寄主植物の伐採木や立ち枯れにも集まります 。


基本情報
| 体長 | 8~15㎜ |
| 分布 | 北海道、利尻島、奥尻島、本州、佐渡、隠岐、四国、九州 |
| 食草・寄生植物等 | 幼虫:各種広葉樹(ナラ類、カエデ類、サクラ類など)針葉樹の枯死材 成虫:訪花性があり、ノリウツギ、ショウマ類、カエデ類などの花の蜜や花粉 |
| 成虫出現期 | 5~8月 |
観察と撮影後記
本種はハナカミキリ亜科の中でも、特に上翅の色彩変異が著しいことで知られています。同一の生息地であっても、鮮やかな緑色から重厚な銅緑色、そして深みのある暗赤色まで、多様な発色の個体が混在して観察されます 。
愛好家の間では、学名の種小名に由来して「ドリス」という愛称で呼ばれることがありますが、これはギリシャ神話の女神にちなんだ名称です。
地理的な変異にも注目すべき点があり、日本全国に広く分布しているものの、北海道および千島列島に産する個体群は亜種として区別され、本州以南のものとは形態的な差異が認められます。
学名について
カラカネハナカミキリ / Gaurotes (Paragaurotes) doris Bates, 1884
1.属名: Gaurotes(ガウロテス)
ギリシャ語の「gauros(誇り高い、意気揚々とした)」に由来します。本属の持つ美麗な外見を象徴しています 。
2. 亜属名:(Paragaurotes)(パラガウロテス)
語源はギリシャ語の接頭辞 “para-” (παρά) と属名の組み合わせです。
意味:「~のそばに」「~に近い」を意味する para- により、「ガウロテス属に近いもの」という意味を構成しています。Gaurotes 属内での分類上の近縁性を示しています。
3.種小名: doris(ドリス)
ギリシャ神話に登場する海を司る女神(ネレイドの一人)、あるいはその母であるドリスに由来します。カミキリムシの学名には、しばしば神話上の名称が引用されます 。
3.命名者と年号: Bates, 1884
Henry Walter Bates: 19世紀のイギリスの昆虫学者。アマゾン探検や「ベイツ型擬態」の提唱で著名ですが、日本の昆虫研究にも多大な貢献をしました 。記載論文: Journal of the Linnean Society of London, Zoology, Vol. 18 (1884).
和名の由来
「カラカネ」は漢字で「唐金」と書き、青銅(ブロンズ)を指します。本種の上翅が持つ金属光沢を、伝統的な合金の質感に見立てたものです。これに、花に集まる性質を示す「ハナカミキリ」を冠しています。
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