カンボウトラカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科トラカミキリ族に分類される一種です。上翅に描かれる複雑で繊細な白紋と、他のトラカミキリ類には見られない独特の細長い体型が最大の特徴です。主にブナ帯などの山地帯にある広葉樹林に生息し、寄主植物であるカエデ類などの伐採木や倒木に集まります。

基本情報
| 体長 | 11.8~17.4㎜ |
| 分布 | 本州、佐渡、隠岐(島後)、四国、九州 |
| 食草・寄生植物等 | ブナ、シラカバ、ミズナラ、カエデ類 |
| 成虫出現期 | 5~7月 |
観察と撮影後記
本種は、その独特な体型と上翅の複雑な紋様をもち、同様の形態を持つ近縁種は国内には見当たらず、本種が属するグループにおいて、日本を含むアジア極東地域に分布するのはこの基準種1種のみとされています。
広域で見れば、対馬、朝鮮半島、中国東北部、極東ロシアには亜種であるタイリクカンボウトラカミキリ(Rhabdoclytus acutivittis acutivittis (Kraatz,1879))が分布していますが、日本本土に生息する個体群は亜種 inscriptus として区別されます。
和名にある「カンボウ」とは「冠帽」を指し、その由来は北朝鮮の「冠帽峰(カンボウホウ)」にあります。
学名について
カンボウトラカミキリ / Rhabdoclytus acutivittis inscriptus (Bates, 1884)
1.属名:Rhabdoclytus
ギリシャ語の「rhabdos(杖、棒)」と、トラカミキリ族の代表的な属名である「Clytus」を組み合わせたものと考えられます。本属の細長い体型を反映しています。
2.種小名:acutivittis
ラテン語の「acutus(鋭い)」と「vitta(帯、縞)」に由来し、上翅の鋭角な紋様を表現しています。
3.亜種名:inscriptus
ラテン語で「書き込まれた」「刻まれた」を意味し、複雑な白紋が文字のように見えることに由来します。
4.命名者と年号:(Bates, 1884)
Henry Walter Bates:19世紀のイギリスの昆虫学者。アマゾン探検で知られますが、日本のカミキリムシ相の研究にも大きく貢献しました。記載文献:Bates, H. W. (1884). “Longicorn beetles of Japan”. Journal of the Linnean Society of London, Zoology, Vol. 18, pp. 205-262.
和名の由来
本種の和名「カンボウトラカミキリ」の「カンボウ」は、前述の通り北朝鮮の「冠帽峰(カンボウホウ)」という山名に由来します。1930年代、昆虫学者の森為三(モリ・タメゾウ)氏らによる朝鮮半島の昆虫相調査において、冠帽峰は非常に多くの新知見をもたらした場所でした。この時期に整理された和名には、現地の地名にちなむものが多く存在します。
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