カグヤヒメハナカミキリ(旧ニセヨコモンヒメハナカミキリ)Pidonia (Cryptopidonia) kaguyahime Kuboki, 2020

カグヤヒメハナカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科ハナカミキリ族の一種です。長年「ニセヨコモンヒメハナカミキリ」と呼ばれてきましたが、2020年の研究で新種として再記載されました。低山地の落葉広葉樹林に多く、ピドニアを代表する普通種です。

カグヤヒメハナカミキリ(旧ニセヨコモンヒメハナカミキリ)、自然写真
2019年6月  山梨県大月市大月町真木
カグヤヒメハナカミキリ(旧ニセヨコモンヒメハナカミキリ)、自然写真2
2019年7月  山梨県大月市大月町真木

基本情報

体長5.2~9.0㎜
分布北海道、本州、四国、九州
食草・寄生植物等ノブドウ、広葉樹の落枝
成虫出現期5~7月

注)ヒメハナカミキリ属(ピドニア)を写真のみで完全に同定することは、本来非常に困難です。本記事では図鑑の記述に加え、採集地や個体の雰囲気を総合して判断しておりますが、あくまで参考程度にご覧ください。もし明らかな誤りにお気づきでしたら、お手数ですが[こちらのメール]までご連絡いただけますと幸いです。ご協力に感謝いたします。

観察と撮影後記

本種は、かつてニセヨコモンヒメハナカミキリと呼ばれていた種で、低山地の落葉広葉樹林において非常に個体数が多い普通種です。酷似するヨコモンヒメハナカミキリがより高所の針葉樹林帯を中心に生息するのに対し、本種はより低い標高で見られ、ムネアカヨコモンヒメハナカミキリよりも早く出現します。ピドニアの面白さと難しさを象徴するような存在でしたが、最新の知見により「カグヤヒメ」という雅な名が与えられました。

ご参考:詳細は日本のヒメハナカミキリ、日本産カミキリ大図鑑(むし社)などを参照してください。

項目カグヤヒメハナカミキリヨコモンヒメハナカミキリムネアカヨコモンヒメハナカミキリ
現在の学名Pidonia kaguyahimePidonia amentataPidonia signifera
2020年以前の扱いニセヨコモン (P. simillima)(変更なし)(変更なし)
主な生息域低山地〜中山地山地帯〜亜高山帯山地帯〜亜高山帯
環境とホスト落葉広葉樹林(ノブドウ)落葉広葉樹林(ナナカマド)~針葉樹林落葉広葉樹林(オオカメノキ)~針葉樹林
出現時期5月〜76月〜86月上旬〜8
前胸背板の色黒色黒色(時に赤褐色)赤色(黒化型あり)
前翅の斑紋変異は小さい変異はやや小さい変異が激しい

学名について

カグヤヒメハナカミキリ(旧ニセヨコモンヒメハナカミキリ) / Pidonia (Cryptopidonia) kaguyahime Kuboki, 2020

1. 属名: Pidonia (ピドニア)

ギリシャ語の「piduo(πηδύω:跳ねる、湧き出る)」に由来し、花の上で活発に動き回る様子を表しています。

2. 亜属名: Cryptopidonia (クリプトピドニア)

ギリシャ語の「kryptos(κρυπτός:隠れた)」と属名の合成語。本亜属が隠れた形質(主に雄交尾器の構造など)によって定義されることを示唆しています。

3. 種小名: kaguyahime (カグヤヒメ)

日本最古の物語とされる『竹取物語』の主人公「かぐや姫」に由来します。長年、別の種の学名の影に隠れて正体が判然としなかった歴史的背景や、その美しさ、日本を象徴する種であることなどから命名されました。

4. 命名者と年号: Kuboki, 2020

命名者: 窪木幹夫(Mikio Kuboki)。日本のハナカミキリ研究、特にピドニア分類の世界的権威です。記載文献: “Notes on the Japanese species of the subgenus Pidonia (Cryptopidonia) (Coleoptera, Cerambycidae), with description of a new species.” Elytra, New Series, 10 (2): 251–256. (2020)

窪木幹夫:日本産ヒメハナカミキリ属(コトヒメハナカミキリ亜属)(鞘翅目カミキリムシ科)の 1 新種の記載を含む新知見。— ニセヨコモンヒメハナカミキリ Pidonia simillima Ohbayashi et hayashi, 1960 は,奈良県稲村ヶ岳産の♂個体(1956 年 7 月 22 日採集)を正基準標本(holotype), 同 ♀個体を別基準標本(allotype)として記載された.副基準標本(paratype)は ,“many: Honshu, Shikoku, Kyushu”と記述されているだけで,具体的な採集場所,採集日,採集者の記述がない。不幸なことに,正基準標本は,虫害により,左中脚と中胸腹板の一部だけになっていたが,同所同日に採集された別基準標本を調査した結果,基準標本の雌雄はムネアカヨコモンヒメハナカミキリ Pidonia masakii hayashi, 1955 の黒化型と判明した。一方,従来から本種と誤同定されてきたものは,未記載の新種であることが明らかになったので,カグヤヒメハナカミキリ(新種新称)Pidonia kaguyahime kuboki, sp. nov.と命名して記載した。Elytra, Tokyo, New Series, 10 (2): 251–256

和名の由来

学名に合わせて新称された「カグヤヒメハナカミキリ」が現在の標準和名です。旧称の「ニセヨコモン〜」は、基準標本の誤認(ムネアカヨコモンとの混同)に端を発した名称であったため、新種記載に伴い一新されました。

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