イワサキケブカカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科フトカミキリ亜科ホソヒゲケブカカミキリ族に分類されます。2013年に韓国で新種として記載された種ですが、「月刊むし」の2017年4月号(554号)にて、露木繁雄氏と平山洋人氏によって初めて記録されました。

基本情報
| 体長 | 5~8㎜ |
| 分布 | 神奈川県、東京都、山梨県、四国(徳島) |
| 食草・寄生植物等 | クワ科のヒメコウゾやカジノキ |
| 成虫出現期 | 6~8月 |
観察と撮影後記
「ここにいますよ」と教えていただき、ようやく撮影することができました。寄主植物は、道端に生えていたヒメコウゾ(クワ科)だったと記憶しています。
本種は、単為生殖(メス単独で繁殖可能)の可能性が高いとされ、さらに外来種と推定されている点で、生物学的に非常に興味深い存在です。
単為生殖は、わずか1頭のメスが侵入しただけでも個体群を成立させ得るという特徴を持ちます。この性質に外来種という条件が加わると、定着・拡散の潜在力はきわめて高くなります。生態系への影響という観点からも、注意深い観察が必要な種といえるでしょう。
一方で、本種は小型で目立たず、現時点で顕著な農業被害も報告されていません。そのため調査や研究の優先順位が高くなりにくい事情も理解できます。しかし、初期段階での分布状況や繁殖様式の解明は重要であり、今後の継続的な記録が望まれます。
学名について
1. 属名 Eupogoniopsis(エウポゴニオプシス)
属名は、既存の Eupogonius 属に、ギリシャ語の接尾辞 -opsis(〜に似たもの) を付けた名称です。
- eu-:良い、立派な
- -pogon:ひげ
- -opsis:外見、〜に似たもの
したがって Eupogoniopsis は
「立派なひげをもつ Eupogonius 属に似たもの」
という意味合いになり、分類学的に近縁であることを示唆しています。
2. 種小名 granulatus(グラヌラートゥス)
ラテン語 granulatus(粒状の、ざらついた)に由来します。
体表の微細な顆粒状構造を表現した命名と考えられます。
3. 命名者 Lim, 2013
本種は、韓国の研究者 Jongok Lim 博士 により2013年に新種として記載されました。
種小名は、日本での発見者である岩崎氏(岩崎一氏・泰雄氏)に献名されたものです。
発見の経緯と日本初記録
日本での最初の確認は2016年、神奈川県相模原市 岩崎一氏・泰雄氏親子が、自宅周辺のヒメコウゾに多数の小型カミキリムシが集まっていることに気づいたことがきっかけです。2013年に韓国で記載されたばかりの本種であることが判明し、露木繁雄・平山洋人, 2017. 外来種と思われるホソヒゲケブカカミキリ属のカミキリEupogoniopsis granulatus. 月刊むし, (554)に掲載。
注目される二つの特徴
1. 単為生殖の可能性
相模原市で最初に採集された多数の個体がすべてメスであったことから、本種はオスを必要としない単為生殖を行っている可能性が高いと考えられています。
これが事実であれば、分布拡大能力は非常に高いことになります。
2. 外来種の可能性
韓国で記載された種であること、そして日本での出現状況が突発的であったことから、貨物などに随伴して侵入した外来種である可能性が指摘されています。
現在の分布
相模原市での発見以降、分布は徐々に拡大しています。
- 東京都:八王子市(高尾山周辺)・町田市など
- 山梨県:上野原市など神奈川県隣接地域
- 四国:徳島県でも記録あり
分布は飛び地的に広がっている可能性もあり、今後の動向が注目されます。
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