イシガキゴマフカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科フトカミキリ亜科ゴマフカミキリ族の一種で、ヨナグニゴマフカミキリの亜種とされています。
主に石垣島で見られることからこの名があり、翅には胡麻を散らしたような細かな斑点模様が特徴です。
島嶼性の分布と独特の斑紋が魅力のカミキリムシです。

基本情報
| 体長 | 11.1~15.6㎜ |
| 分布 | 八重山諸島(石垣島、西表島、竹富島、小浜島、新城島(上地島)、黒島) |
| 食草・寄生植物等 | アコウ、ガジュマル、ヤマグワ、タブノキ、ホルトノキ、クロツグ、ソウシジュ、クロヨナ、アカメガシワ、ギンネム 幼虫:上記の広葉樹の枯れ木や伐採枝の内部 成虫:寄主となる広葉樹(ガジュマルやアコウなど)の若い枝の樹皮を後食 |
| 成虫出現期 | 3~10月 |
観察と撮影後記
本種は、広葉樹の倒木や枯れ枝の上で静止している姿を観察することができます。樹皮の模様とよく調和する体色をしているため、いわゆる「ルッキング(目視探索)」のみで見つけるには、たいがいの昆虫はそうですが、相応の時間が必要となります。気づいた瞬間の喜びはありますが根気を要する相手でもあります。宮古島産亜種(アシナガゴマフカミキリ)などとの関係についても、DNA解析の進展が期待されるところです。
イシガキゴマフカミキリ(Mesosa yonaguni subkonoi)そのものを主対象としたミトコンドリアDNA(mtDNA)解析の報告は、現時点では明確には確認できません(未確認の文献が存在する可能性はあります)。しかし、上位分類群であるゴマフカミキリ族(Mesosini)や、琉球列島産カミキリムシの系統地理を扱った研究は公表されており、参考に下記しました。
1. Molecular phylogeny of the tribe Mesosini
(フトカミキリ亜科ゴマフカミキリ族の分子系統学)
本研究は、イシガキゴマフカミキリが属する Mesosa 属(あるいは亜属)が、遺伝的にどのようなまとまりを示すのか、また他群とどの程度明確に区別されるのかを検討する基礎的文献です。形態分類で整理されてきたグループが、分子系統の枠組みの中でどのように再評価されるかという点は、今後の亜種概念の検討にも関わる重要なテーマといえます。
2. Phylogeography of the flower-visiting longhorn beetle Grammoptera ssp. in the Ryukyu Islands, Japan
(琉球列島における訪花性カミキリムシ類の系統地理)
本研究はゴマフカミキリ族そのものを対象としたものではありませんが、琉球列島における系統分化の実例として重要です。いわゆる「渡瀬線」や「蜂須賀線」といった生物地理学的境界が、ミトコンドリアDNAの分化にどのように影響しているかを示しています。
島嶼ごとに形態差が見られる本種群においても、同様の歴史的隔離や遺伝的分化が起きている可能性があります。
学名について
1.属名:Mesosa(メソサ)
古代ギリシャ語の mesos(「中間の」「真ん中の」)に由来すると考えられています。
命名当時、形態的特徴や分類学的位置づけが他のグループとの「中間的」な性格を持つと認識されたことが背景にあるとされます。
2.種小名:yonaguni(ヨナグニ)
日本最西端の島「与那国島」に由来します。
基亜種(ヨナグニゴマフカミキリ)が与那国島で発見・記載されたことから、種全体の名称として地名が採用されました。島嶼生物においては、模式産地がそのまま種小名になる例は少なくありません。
3.亜種名:subkonoi(スブコノイ)
本亜種を特定する重要な名称です。
したがって subkonoi は、「コノイ(河野氏にちなむ分類群)に近いもの」といった意味合いになります。既存の近縁種や献名種との比較の中で、その類似性を示唆する名称として与えられたものと推測されます。
4. 命名者と年:Breuning, 1964
Stephan von Breuning(ステファン・フォン・ブロイニング)は、フトカミキリ亜科の分類学において世界的に著名な研究者で、生涯にわたり膨大な数のカミキリムシを記載しました。日本のカミキリムシでは「ブロイニングカミキリ」がよく知られています。
1964年に本亜種が正式に記載され、現在に至る学名が確立しました。
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