ヒメスジシロカミキリ / Heteroglenea glechoma (Pascoe,1867)

ヒメスジシロカミキリは、日本国内では先島諸島に分布するカミキリムシ科トホシカミキリ族の一種です。海岸付近に自生するオオハマボウの葉上によく見られます。

ヒメスジシロカミキリ、自然写真3
ヒメスジシロカミキリ、自然写真2
2018年4月 西表島
ヒメスジシロカミキリ、自然写真
浜辺でそよぐ様子もなかなかいいものです。

基本情報

体長7~10㎜
分布先島諸島(石垣島、西表島、波照間島)
食草・寄生植物等オオハマボウ(アオイ科フヨウ属)
成虫出現期4~6月

観察と撮影後記

ヒメスジシロカミキリは、日本では石垣島、西表島、波照間島に分布域を持つ種です。主に海岸沿いのオオハマボウ(ユウナ)をホストとしており、成虫は初夏の強い日差しの下、大きな葉の裏側に静止して葉脈を囓(かじ)る姿が見られます。青みを帯びた白さと黒い斑紋のコントラストは、八重山の自然環境において非常に際立つ存在です。

学名について

ヒメスジシロカミキリ / Heteroglenea glechoma (Pascoe,1867)

1. 属名: Heteroglenea (ヘテログレネア)

ギリシャ語の「heteros(ἕτερος:異なる、別の)」と、近縁な属名である「Glenea(グレネア)」を組み合わせたものです。1897年にGahanによって、爪の形態や上翅の側縁隆条(側方の筋)を欠く特徴などから、Glenea属とは異なるグループとして提唱されました。

2. 種小名: glechoma (グレコマ)

シソ科のカキドオシ属(Glechoma)を指すラテン語です。原記載者であるパスクーが、本種の色彩や質感、あるいは何らかの形態的類似性をこの植物名に例えて命名したものと考えられます。なお、かつて日本で使われていた学名 Glenea hamabovola Hayashi, 1975 は、現在は本種のシノニム(同物異名)とされています。

3. 命名者と年号: (Pascoe, 1867)

命名者: Francis Polkinghorne Pascoe(フランシス・ポルキングホーン・パスクー)。記載文献: “Longicornia Malayana; or, a Descriptive Catalogue of the Insects collected by Mr. A. R. Wallace in the Malay Archipelago.” The Transactions of the Entomological Society of London, series 3, volume 3, page 409. (1867)

指名亜種の背景: 本種は東南アジアからオセアニアにかけて広く分布する広域分布種であり、日本(先島諸島)に産するものは、別個の亜種として分立させず、種としての指名亜種に含めるのが現在の一般的な分類学的扱いです。

和名の由来

「ヒメ(小型の)」「スジ(条紋のある)」「シロ(白い)」「カミキリ」の意。白い体色に黒いスジ状の紋様があり、シラホシカミキリ族の中でも繊細な美しさを持つことに由来します。

補足:シソ科のカキドオシ属(Glechoma

シソ科のカキドオシ属(Glechoma)は、世界に数種が分布する多年草のグループです。カミキリムシの種小名(glechoma)の由来となったこの植物群について、植物学的な特徴と名前を整理しました。

カキドオシ属(Glechoma)の主な特徴

カキドオシ属は、シソ科(Lamiaceae)のなかでもカキドオシ亜科に属します。

形態: 地面を這うように伸びる「匍匐(ほふく)茎」を持つのが最大の特徴です。節から根を下ろして広がり、春になると直立する花茎を伸ばします。

葉: 対生し、形は腎円形(心臓形)で、縁には鈍い鋸歯(ギザギザ)があります。

花: 葉の付け根に数個ずつ付き、シソ科特有の「唇形花(しんけいか)」を咲かせます。色は淡紫色や青紫色が多いです。

香り: 茎や葉を揉むと、シソ科らしい爽やかで強い芳香を放ちます。

日本を代表する種:カキドオシ

日本で単に「カキドオシ」と呼ぶ場合、通常は Glechoma hederacea subsp. grandis を指します。

和名の由来: 勢いよく伸びる茎が隣地との「垣根を突き通して」伸びてくる様子から「垣通(カキドオシ)」と名付けられました。

別名: 子供の疳(かん)の虫に効くとされたことから「カントリソウ(疳取草)」とも呼ばれ、古くから薬草(生薬名:連銭草)として利用されてきました。

語源と学名の背景

属名の由来: ギリシャ語の「glechon(ギリシャ語:γλήχων)」に由来します。これはもともと「ペニーロイヤルミント(メグサハッカ)」を指す言葉でしたが、リンネがカキドオシ属の学名として採用しました。

カミキリムシとの関連:

前述のヒメスジシロカミキリの種小名 glechoma についてですが、本種がカキドオシを食草(ホスト)にしているわけではありません(先島諸島でのホストはアオイ科のオオハマボウです)。

19世紀の記載者パスクー(Pascoe)などの命名者は、昆虫の色彩や斑紋の雰囲気が、特定の植物(この場合はカキドオシ属の花や葉の質感)に似ていると感じた際、その植物名を種小名に引用することがしばしばありました。ヒメスジシロカミキリの色彩は、カキドオシの花の淡い色調を連想させたのかもしれません。

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