ヒメヒゲナガカミキリ / Monochamus (Monochamus) subfasciatus sabufasciatus (Bates, 1873)

ヒメヒゲナガカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科ヒゲナガカミキリ族の一種です。小型で灰褐色の体に、不規則でやや不明瞭な帯状の斑紋を持つのが特徴とされています。マツやモミなど、マツ科の針葉樹の倒木や伐採木によく見られます。

ヒメヒゲナガカミキリ、自然写真
2019年8月 山梨県北都留郡
ヒメヒゲナガカミキリ、自然写真2
2019年8月  岐阜県高山市奥飛騨温泉郷神坂
ヒメヒゲナガカミキリ、自然写真3
2019年8月 山梨県北都留郡

基本情報

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体長9.5~18.5㎜
分布北海道、奥尻島、本州、伊豆諸島(大島、新島)、淡路島、佐渡、隠岐、九州、対馬、壱岐、五島列島(中通島)、下甑島
食草・寄生植物等各種広葉樹
成虫出現期5~9月

観察と撮影後記

ヒメヒゲナガカミキリは、日本国内においてマツ科植物をホストとして広く適応しており、北は北海道から南は尖閣諸島までその分布を広げています。広域分布に伴い、地域的な変異に基づいた4亜種への分化が認められるものの、その実態は連続的な地域差の範疇として観察されます。本種は、針葉樹林における生態系の一端を担う、極めて一般的なヒゲナガカミキリ族の代表格といえます。

ヒメヒゲナガカミキリの4亜種比較

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亜種名 (和名)学名主な分布域形態的特徴(文献に基づく記述)
ヒメヒゲナガカミキリ(指名亜種)M. s. subfasciatus (Bates, 1873)北海道、本州、佐渡、隠岐、淡路、四国、九州、対馬、壱岐、五島列島など体色は灰褐色。上翅の斑紋は個体変異に富むが、標準的な形態。
リュウキュウヒメヒゲナガカミキリM. s. meridionalis Hayashi, 1955屋久島、種子島、奄美大島、徳之島指名亜種に比べ、上翅の点刻(表面の小さな窪み)がより強く、粗い傾向があるとされる。
オキナワヒメヒゲナガカミキリM. s. insularis Hayashi, 1955沖縄本島、久米島指名亜種に類似するが、雄交尾器の形態や微毛の密度などの細部で区別される。
ヤエヤマヒメヒゲナガカミキリM. s. elegans Breuning, 1965石垣島、西表島、尖閣諸島(魚釣島)他の亜種と比較して、上翅の白紋や斑紋がより明瞭で、コントラストが強くなる傾向がある。

本種は広域分布種であり、日本国内では指名亜種のほかに、屋久島から奄美にかけてのリュウキュウ亜種、沖縄本島のオキナワ亜種、そして八重山列島から尖閣諸島に分布するヤエヤマ亜種の計4亜種に分類されています。これらは主に斑紋の鮮明さや翅面の点刻の状態によって区別されます。

学名について

1. 属名: Monochamus (モノカムス)

ギリシャ語の「monos(μόνος:単一の)」と「chame(χάμη:割れ目、口を開けること)」の合成語とされています。これは、本属の形態的特徴(脛節の切り込みや、前胸背板の構造など)に由来すると考えられています。

2. 亜属名: Monochamus (モノカムス)

属名と同一の指名亜属です。本種が属するグループが、ヒゲナガカミキリ属の標準的な形質を備えていることを示しています。

3. 種小名: subfasciatus (スブファスキアトゥス)

ラテン語の「sub(〜に近い、やや、下方に)」と「fasciatus(帯状の斑紋がある)」の合成語です。上翅に見られる斑紋が、完全な帯状ではなく「やや帯状を呈する」あるいは「不完全な帯がある」という物理的特徴を表現しています。

4. 命名者と年号: (Bates, 1873)

命名者: Henry Walter Bates(ヘンリー・ウォルター・ベイツ)。19世紀イギリスの昆虫学者で、アマゾン探検や「ベイツ型擬態」の発見で知られます。記載文献: “On the Longicorn Coleoptera of Japan.” The Annals and Magazine of Natural History, (4) 12: 148–156, 193–201, 308–318, 380–390. (1873)※本種の記載は308ページに行われています。なお、本種は日本に分布するものが指名亜種(M. s. subfasciatus)とされています。

和名の由来

「ヒメ(姫=小さい)」+「ヒゲナガカミキリ(触角の長いカミキリムシ)」の意味。大型種が多いヒゲナガカミキリ属(Monochamus)の中では比較的小型であることに由来します。

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