フジコブヤハズカミキリ / Mesechthistatus fujisanus Hayashi,1957

フジコブヤハズカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科コブヤハズカミキリ族の一種です。後翅が退化して飛ぶことができず、枯れ葉に紛れるような体色と、上翅にある一対のコブ、そして鋭く尖った翅端が特徴とされています。富士山周辺や丹沢山塊などのブナ林において、秋に落葉上でよく見られます。

フジコブヤハズカミキリ、自然写真、1
フジコブヤハズカミキリ、自然写真、2
2018年10月 山梨県北都留郡 

基本情報

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体長13.0~20.2㎜
分布上信越高原(南部)、群馬県榛名山、秩父山地(東部)、関東山地、道志山地、丹沢山地、箱根火山(中央火口丘)、御坂山地、天守山地、富士山、筑摩山地(美ヶ原)~八ヶ岳(北部)
食草・寄生植物等ウド、ミズキ、ヤマハンノキ、マルバダケズキの枯れ葉を後食。寄主植物:モミ、ハリモミ、ブナ、モチノキ、ニシキウツギ、カンバ類、シデ類、カエデ類
成虫出現期8月下旬~10月下旬

観察と撮影後記

標高1200メートル前後のブナ帯から針葉樹林帯に生息しています(写真は標高1300メートルで撮影)。
新成虫は晩夏から初秋にかけて、ノブドウなどの枯葉の中から見つかります。採集にはビーティングネットを用いる方法が一般的ですが、写真撮影を目的として目視で探す場合は、枯葉を一枚一枚丁寧に確認していくことになります。

また、本種では近縁種との交雑個体(いわゆるハイブリッド)の存在が知られています。私もその姿を求め、秋雨の降る中で枯葉を一枚一枚探しましたが、残念ながら成果は得られず、体調を崩す結果となりました。
年齢のこともあり、野外でのハイブリッド個体の撮影は、ひとまず諦めることにしました。

学名について

フジコブヤハズカミキリ / Mesechthistatus fujisanus Hayashi,1957

1.属名: Mesechthistatus (メセクティスタトゥス)

ギリシャ語の「mesos(μέσος:真ん中の、中間の)」と、既存の属名である「Echthistatus」の合成語です。分類学的に近縁な属の中間的な形質を有することに由来します。

2.種小名: fujisanus (フジサヌス)

本種のタイプ産地(記載の基準となった採集地)である「富士山(Fujisan)」に、ラテン語の形容詞語尾「-us」を付加したものです。「富士山産の」という意味を表します。なお、本種は日本固有種であり、亜種は認められていないため、本種そのものが指名亜種的な扱いとなります。

3.命名者と年号: Hayashi, 1957

命名者: 林 匡夫(はやし まさお)。20世紀の日本を代表するカミキリムシ研究者。緻密な観察に基づいた正確な形態記載が特徴です。命名した学名の多くが現在も有効名(Valid name)として生き残っていることは、その分類眼の確かさを証明しています。記載文献: “Studies on Cerambycidae from Japan, VII.” The Entomological Review of Japan, 8(2): 45–48. (1957)

和名の由来

命名の直接的な背景を記した資料は確認できませんが、本種の模式産地が富士山(静岡県側)であることは記載論文に明記されています。 模式産地である「富士山」と、本種が属するグループの総称である「コブヤハズカミキリ」を組み合わせた命名であると推察されます。

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