エグリトラカミキリは、日本全国に広く分布するカミキリムシ科カミキリ亜科トラカミキリ族の一種です。上翅の先端が鋭く切り落とされたように「抉(えぐ)れて」おり、黄色と黒の複雑な波状紋を持つのが大きな特徴です。平地から山地まで幅広く生息し、各種広葉樹の伐採木や、花(クリやノリウツギなど)に集まる姿が頻繁に観察されます。


基本情報
| 体長 | 8.9~14.8㎜ |
| 分布 | 北海道、礼文島、利尻島、奥尻島、本州、粟島、佐渡、隠岐、小豆島、四国、九州、壱岐、対馬、五島列島(中島通・福江島)、種子島、屋久島、トカラ列島(中之島?) |
| 食草・寄生植物等 | 幼虫: クヌギ、コナラ、クリなどのブナ科を中心に、多種多様な広葉樹の枯死木や伐採木 。 成虫: 訪花性があり、クリ、ノリウツギ、カエデ類などの花の蜜や花粉 。 |
| 成虫出現期 | 4~9月 |
観察と撮影後記
フィールドを歩けば必ずと言っていいほど出会う、いわゆる「超」が付くほどの普通種です。しかし、私はある種の「敬意」を持っています。その理由は、彼らの学名 “japonicus” にあります。日本の名を背負い、この島国の豊かな広葉樹林に完璧に適応した結果、どこにでも居られる強さを手に入れた。そう考えると、この複雑な波状紋も、どこか伝統的な和柄のような気品を感じさせます。
撮影の際は、ぜひその名前の由来となった「翅の先端(翅端)」に注目してみてください。あえて写真では掲載しておりませんが、実際に近くまで寄ってみると、まるで彫刻刀で抉り取ったような鋭い形状が確認できるはずです。
学名について
1.属名:Chlorophorus(クロロフォルス)
ギリシャ語を語源とする2つの言葉から成り立っています 。
“chloros” (χλωρός): 「緑色」「黄緑色」を意味します。塩素 (Chlorine) や葉緑素 (Chlorophyll) の語源と同じです 。”phoros” (-φόρος): 「持つもの」「運ぶもの」を意味します。
つまり、属名全体で 「緑色を帯びたもの」 という意味になります 。トラカミキリ属の中でも、本属には緑色がかった色調を持つ種が含まれることに由来します。
2. 種小名:japonicus(ヤポニクス)
ラテン語に由来します。
“japonicus“: 「日本産の」「日本の」という意味の形容詞です。
本種が日本を代表する、あるいは日本で最初に確認されたトラカミキリの一種であることを象徴しており、まさに「日本固有」のアイデンティティを示す名称です。
3. 命名者と年号:(Chevrolat, 1863)
Louis Alexandre Auguste Chevrolat: 19世紀フランスの昆虫学者です。彼は生涯で2,000種近くの昆虫を記載しましたが、特に鞘翅目(コウチュウ目)のエキスパートとして知られています 。
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