ブロイニングカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科トホシカミキリ族の一種です。全体が淡い黄褐色の微毛に包まれた姿が特徴で、人気のあるカミキリムシと思います。

基本情報
| 体長 | 8~11㎜ |
| 分布 | 本州、四国、九州 |
| 食草・寄生植物等 | サワグルミ、オニグルミ、ヤシャブシ、ハンノキ、マンサク |
| 成虫出現期 | 5~7月 |
観察と撮影後記
本種は、前胸背板の両側に黄色の条紋を備え、中央部には斑紋を欠くこと、さらに小楯板が黄色の微毛に覆われる点が特徴的な、美しいカミキリムシです。これらの特徴により、チチブニセリンゴカミキリやセミスジニセリンゴカミキリと容易に区別することができます。
本種は比較的珍しく、撮影の機会は本写真(林床で撮影)のみで追加がありません。成虫はオニグルミの葉を後食するとされていますが、今後、そうした生態の一端が撮影できればと思います。
学名について
ブロイニングカミキリ / Saperda (Saperda) ohbayashii Podaný, 1963
1. 属名: Saperda (サペルダ)
古代ギリシャ語で「ある種の塩漬け魚」を意味する「saperdes(σαπέρδης)」に由来します。Fabriciusが本属を創設した際、古典的な名称を引用して命名されました。
2. 亜属名: Saperda (サペルダ)
属名と同一の指名亜属です。
3. 種小名: ohbayashii (オオバヤシイ)
日本を代表するカミキリムシ研究者、大林一夫氏(Kazuo Ohbayashi)への献名です。
4. 命名者と年号: Podaný, 1963
命名者:Richard Podaný(リカルド・ポダニー)は、20世紀中盤に活躍したチェコスロバキア(現チェコ)の昆虫学者であり、カミキリムシ科(Cerambycidae)の分類において極めて重要な足跡を残した専門家です。記載文献: “Monographie der Gattung Saperda Fabr. (Col., Cerambycidae).” Bulletin de la Société des Sciences Naturelles de l’Ouest de la France. (1963)
和名の由来
和名の「ブロイニング」は、フトカミキリ亜科の世界的権威であるシュテファン・フォン・ブロイニング(Stephan von Breuning)博士にちなみます。学名では大林氏に、和名ではブロイニング氏にと、二人の偉大な先人への敬意が込められた名称となっています。これは記載当時の分類学的整理において、両氏の功績が不可欠であった背景に基づいた命名であると推察されます。
Richard Podaný(リカルド・ポダニー)
1. 人物像と専門分野
- 国籍: チェコスロバキア(当時)。
- 活動時期: 1930年代から1980年代にかけて精力的に活動しました。
- 専門: 世界のカミキリムシ科、特にパレオアークティック(旧北区)およびオリエンタル(東洋区)のカミキリムシの分類を専門としていました。
- 研究スタイル: 特定の属を徹底的に掘り下げて再検討する「モノグラフ(専攻論文)」の執筆を得意とし、その記述は非常に詳細かつ体系的です。
2. 日本産カミキリムシとの関わり
ポダニーは、日本のカミキリムシ研究者とも交流がありました。ブロイニングカミキリの種小名 “ohbayashii” は、日本のカミキリ研究の大家である大林一夫氏に献名されたものです。これは、当時の東西を問わない学術的交流の深さを物語っています。
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