アトモンマルケシカミキリは日本に分布するカミキリムシ科フトカミキリ亜科モモブトカミキリ族アラゲケシカミキリ属のカミキリムシです。体色は黒褐色で、上翅(背中の翅)に淡黄色の縦筋が複数あるのが特徴です。
以下は、野外で撮影したアトモンマルケシカミキリの写真です。


基本情報
| 体長 | 3.5~7.0㎜ |
| 分布 | 海道、天売島、本州、佐渡、隠岐、四国、九州、対馬、筑前沖の島、五島列島(中通島、若松島)、甑島列島、大隅諸島(硫黄島、黒島)、種子島、屋久島、沖永良部島 |
| 食草・寄生植物等 | 幼虫:各種広葉樹(エゴノキ、アカメガシワ、イチジク、クワ、ケヤキなど)の枯死した枝や伐採木の内部 成虫:広葉樹の若い枝の樹皮など(写真参照) |
| 成虫出現期 | 4~8月 |
観察と撮影後記
非常に小型の種であるため、ルッキングでは見つけるのが難しく、実感としては「普通種」と言われるほど容易に出会える印象はありません。少なくとも、注意深く観察しなければ存在に気づかない虫だと感じています。
一方で、本種を観察していると、クモに擬態している、あるいは少なくとも「クモらしく見せようとしている」ように思える点が興味深く感じられます。触角の動かし方や折り返す形状など、少し遠目に見ると、前脚を構えた小型のクモと見間違えることがあります。
学名について
1. 属名:Exocentrus(エクソセントルス)
Exocentrus は、ギリシャ語の
exo(外側の) と kentron(鋭い突起・刺)
を組み合わせた名称です。
この属に共通する、前胸側面に外向きに突き出した鋭いトゲ状突起を表現したもので、和名の「マルケシカミキリ属」に含まれる種の形態的特徴を端的に示しています。
2. 種小名:lineatus(リネアトゥス)
種小名 lineatus は、ラテン語で
「線のある」「筋の入った」という意味を持つ形容詞です。
これは、上翅に見られる数本の淡い縦筋模様を指しており、ベイツが日本から送られた標本を観察した際、本種を識別する重要な特徴として注目した点と考えられます。
3. 命名者と記載年:Bates, 1873
本種を記載した ヘンリー・ウォルター・ベイツ(Henry Walter Bates) は、アマゾン探検を通じて「ベイツ型擬態」を提唱したことで知られる19世紀の博物学者です。
1873年、ベイツは日本に滞在していたジョージ・ルイスが採集した膨大な昆虫標本を研究し、その成果を論文『On the Longicorn Coleoptera of Japan』として発表しました。アトモンマルケシカミキリは、この論文の中で新種として科学的に記載され、世界に紹介されました。
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