アカジマトラカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科トラカミキリ族の一種です。
他のトラカミキリ類と比べて出現時期が遅い点が特徴とされています。
ケヤキの老木や巨木が残る社寺林や河岸林に、局地的に生息します。


基本情報
| 体長 | 12.6~20.3㎜ |
| 分布 | 本州、四国、九州 |
| 食草・寄生植物等 | 幼虫:主にケヤキやエノキ、エゾエノキ、マメガキなどの生木の枯死枝や衰弱した部分 成虫:晴天の日中に活動し、オオイタドリやヌルデなどの花粉など |
| 成虫出現期 | 8~10月 |
観察と撮影後記
アカジマトラカミキリは、鮮やかな朱赤色と黒色の縞模様をもつ、きわめて印象的なカミキリムシです。この強い配色は、生物学的には警告色(警戒色)として機能していると考えられています。
本種自体には毒性はありませんが、その赤と黒の配色は、毒成分(カミジンやカンタリジンなど)をもつ他の昆虫に姿を似せるベイツ型擬態であるという説が有力です。とくに、多くのカミキリムシ類が、不味く有毒であることで知られるベニボタル類に似た色彩を示すことが知られており、鳥類などの捕食者が「赤い虫は危険・不味い」と学習している点を利用して、捕食リスクを下げていると考えられています。
もっとも、これほど目立つ色彩でありながら、実際の野外では意外なほど見つけにくい印象があります。今回の撮影でも、個体は日没に近い時間帯(15時半以降)になってから活動していましたが(ただし、この1頭のみ)、ケヤキの樹上では光の当たり方によって赤黒の模様が影に溶け込み、あらかじめ存在を知っていなければ気づけなかったと思います。飛び立って初めて「そこにいた」と気づくほどで、色彩と環境の関係の面白さを感じさせられました。
本種にはなかなか出会う機会がなく、長年、晩夏にケヤキで見られるという情報をもとに探し続けていましたが、今回、良好なケヤキを教えていただいたおかげで、ようやく撮影に至りました。この場を借りて感謝申し上げます。将来的には、訪花個体の撮影ができればと思います。
学名について
アカジマトラカミキリ
Anaglyptus bellus Matsumura & Matsushita, 1933
属名:Anaglyptus(アナグリプトゥス)
属名 Anaglyptus は、ギリシャ語の
- ana(上に、再び)
- glyptos(彫られた、刻まれた)
を組み合わせた語で、「浮彫り(レリーフ)」を意味します。トラカミキリ類に見られる立体的で複雑な斑紋や、前胸背の特徴的な形状を表現した名称と考えられています。
種小名:bellus(ベルルス)
bellus はラテン語で「美しい」「愛らしい」といった意味を持ちます。朱赤色と黒色の鮮やかな対比が印象的な本種の外見を、そのまま反映した種小名と言えるでしょう。
命名者 Matsumura & Matsushita, 1933
本種は1933年に、松村松年博士と松下真幸博士によって記載されました。両氏は日本の昆虫分類学の発展に大きく貢献した研究者であり、本種の学名にも、形態の美しさを率直に評価した命名意図がうかがえます。