キボシカミキリ基亜種 / Psacothea hilaris hilaris (Pascoe, 1857)

キボシカミキリは、日本に広く分布するカミキリムシ科フトカミキリ亜科ヒゲナガカミキリ族の一種です。上翅に鮮やかな黄白色の斑紋が散在し、体長の2〜3倍に達する非常に長い触角(特にオス)を持つ点が特徴です。クワやイチジクなどのクワ科植物が自生する林縁、またはそれらの栽培地、庭園などに生息します。

キボシカミキリの自然写真 アジサイ
2010年7月 神奈川県藤沢市
キボシカミキリの自然写真 樹上
2014年7月 山梨県北杜市

基本情報

スクロールできます
体長15~30㎜
分布本州、猿島、伊豆諸島(神津島)、粟島、隠岐、四国、九州、対馬、尖閣諸島(魚釣島)
食草・寄生植物等幼虫: クワ、イチジク、カジノキ、ヒメコウゾ(すべてクワ科)。
成虫: クワ、イチジクなどのクワ科植物の生木の樹皮、および葉ク
成虫出現期5~11月

観察と撮影後記

キボシカミキリは、かつては養蚕農家のクワ園などで非常に多く見られた種ですが、近年の環境変化や管理形態の変化により、都市部近郊では以前ほど頻繁には遭遇しなくなったとの指摘もあります。

2010年撮影は携帯電話(フィーチャーフォン)で撮影したものです。

本種には斑紋の変異が見られ、古くから「関東型」と「関西型」の差異が議論されてきました。一般に関東型は斑紋が細かく、関西型は斑紋が大きく鮮明になる傾向があるとされていますが、個体変異も大きく、その境界線は厳密には判別しがたい側面があります。

また、本種は島嶼部での分化が著しく、奄美や沖縄諸島などを含め、日本国内で約10亜種に分類されています。これらは島ごとに斑紋の形状や体色が微妙に異なり、分類学的にも非常に興味深い対象です。

参考:イシガキキボシカミキリキボシカミキリ沖永良部亜種

学名について

キボシカミキリ基亜種 / Psacothea hilaris hilaris (Pascoe, 1857)

1. 属名:Psacothea(プサコテア)

この属名は、ギリシャ語を語源とする2つの言葉から構成されています。

  • “psakas” (ψακάス):「滴(しずく)」「小雨」、あるいは「小さな斑点」を意味します。
  • “thea” (θέα):「外観」「眺め」「姿」を意味します。

これらを組み合わせることで、属名全体としては「斑点のある姿をしたもの」という意味になります。これは、キボシカミキリ属の最大の特徴である、上翅に散らばる美しい斑点(星)を的確に表現した命名です。

2. 種小名:hilaris(ヒラリス)

こちらはラテン語に由来します。

  • hilaris:ラテン語で「陽気な」「明るい」「鮮やかな」という意味の形容詞です。

黒褐色の地色に、鮮烈な黄白色の斑紋が並ぶコントラストの強い色彩を「鮮やかで明るいもの」と捉えて命名されたものと推察されます。属名と合わせると「鮮やかな斑点を持つ姿」という、本種のビジュアルを強調した学名となっています。

3. 命名者と年号:(Pascoe, 1857)

Francis Polkinghorne Pascoe:19世紀のイギリスの昆虫学者です。生涯で数千種に及ぶ甲虫を記載したことで知られ、特にカミキリムシ科の分類において多大な功績を残しました。記載文献Transactions of the Entomological Society of London (New Series) 4: 49. (1857)※当初は Monohammus hilaris として記載されましたが、後に現在の Psacothea 属に再分類されました。そのため、命名者名がカッコで囲まれています。

和名の由来

その名の通り、黒褐色の体表に「黄色い星(斑点)」が散りばめられている外見に由来します。 古来、昆虫の斑紋を「星」と見立てる慣習(ナナホシテントウ等と同様)があり、本種においてもその鮮明な斑紋が「黄色い星」として定義され、標準和名となりました。

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