クビアカトラカミキリ / Xylotrechus rufilius Bates, 1873

クビアカトラカミキリは、日本全土に広く分布するカミキリムシ科トラカミキリ族(Clytini)、トラカミキリ属(Xylotrechus)の一種です。前胸(いわゆる首の部分)が鮮やかな橙紅色を呈し、黒色の本体と鮮明な対比をなします。上翅にはハの字状を含む複数の淡色帯がある点が特徴です。平地から山地の広葉樹林に生息し、伐採木や立ち枯れに集まります。

クビアカトラカミキリ、自然写真、生態
2023年5月 東京都町田市

基本情報

スクロールできます
体長6.3~15.8㎜
分布北海道、本州、栗島、佐渡、隠岐、四国、九州、対馬、屋久島
食草・寄生植物等各種広葉樹
成虫出現期5~9月

観察と撮影後記

本種はその名の通り、鮮やかな赤色の前胸が目を引くトラカミキリです。外見上の特徴から「ブドウトラカミキリ」と混同されるケースが散見されますが、分類学的には両者とも同じトラカミキリ属(Xylotrechus)に属する近縁種です。収斂進化によって似通ったのではなく、属レベルで非常に近い親戚関係にあります。

しかし、生態面では明確な違いが見られます。ブドウトラカミキリがその名の通りブドウ類(ブドウ科)を主な寄主とし、時にブドウ栽培における重要な害虫とされるのに対し、本種は多様な広葉樹を利用します。

この「首が赤い」という特徴をどちらの和名に冠するかという点において、ブドウを食害する種に「ブドウ」の名を与え、本種に形態的特徴を示す「クビアカ」の名を充てたという命名の背景は、実用的な識別を優先した結果と思います。

学名について

クビアカトラカミキリ / Xylotrechus rufilius Bates, 1873

1. 属名:Xylotrechus(クシロトレクス)

この属名は、ギリシャ語を語源とする2つの言葉から成り立っています。

“xylo-” (ξύλον): 「木」「木材」を意味します。
“trechus” (τρέχω): 「走る者」「急いで動く者」を意味します。

意味:属全体で「木を走るもの」という意味になります。これはトラカミキリ類の多くが伐採木の上を非常に素早く動き回る生態を的確に表現しています。

2. 種小名:rufilius(ルフィリウス)

この種小名はラテン語に由来します。

rufus“: 「赤」「赤茶色」を意味する形容詞です。

意味:本種最大の特徴である**「赤い前胸」**を指しています。接尾辞を伴うことで「赤みを帯びたもの」というニュアンスを含んでいます。

3. 命名者と年号 Bates, 1873

Henry Walter Bates: 19世紀のイギリスの昆虫学者。アマゾンでの「ベイツ型擬態」の発見で有名ですが、日本産の昆虫研究にも多大な貢献をしました。

記載文献

Bates, H. W. (1873) “On the Longicorn Coleoptera of Japan.” The Annals and Magazine of Natural History, Series 4, Volume 12: 148-156.

和名の由来

クビアカトラカミキリ(首赤虎天牛)

クビアカ(首赤): 前胸背板が鮮やかな紅色〜橙紅色である特徴を捉えたものです。
トラカミキリ(虎天牛): トラカミキリ族に共通する、黄色や白の帯状紋を持つ「虎」のような模様に由来します。ブドウトラカミキリとの混同を避けるため、寄主植物名ではなく形態的特徴が優先された名称です。 

 

 

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