カエデノヘリグロハナカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科ハナカミキリ族の一種です。非常に細長い体型と、上翅の側縁が黒く縁取られる(縁黒)のが特徴で、和名の由来にもなっています。主に山地のブナ帯から亜高山帯にかけて生息し、特にセンノキ(ハリギリ)やカエデ類が混生する天然林で見られます。

基本情報
| 体長 | 14.0 ~18.2㎜ |
| 分布 | 北海道、奥尻島、本州、四国、九州 |
| 食草・寄生植物等 | 幼虫:センノキ(ハリギリ)、カエデ類などの広葉樹の立ち枯れや朽ち木 成虫:訪花性があり、カエデ類、ナナカマド、ノリウツギなどの花の蜜や花粉 |
| 成虫出現期 | 4~7月 |
観察と撮影後記
本種との出会いは、1980年代の山梨県、大菩薩でした。透明感のある鮮やかなオレンジ色の肢体を見た時の感動は、今でも覚えています。ただ、皮肉なことに花で掬えたのはその時が最初で最後となってしまいました。カエデの花で写真が撮れたらと思いつつ、今に至っております。
学名について
カエデノヘリグロハナカミキリ / Eustrangalis distenioides Bates, 1884
1.属名:Eustrangalis(エウストランガリス)
ギリシャ語の接頭辞 “eu-“(真の、良い、美しい)と、近縁な属である “Strangalia“(ストランガリア)を組み合わせた造語です。
2.種小名:distenioides(ディステニオイデス)
カミキリムシ科の別グループであるホソカミキリ属(Distenia)に、姿形が似ている(-oides)ことに由来します。
3.命名者と年号:Bates, 1884
19世紀を代表するイギリスの昆虫学者、ヘンリー・ウォルター・ベイツによって記載されました。
余談(カエデ「の」ヘリグロハナカミキリについて)
本種の幼虫はカエデ類やセンノキを食樹とし、成虫もカエデの花によく集まります。和名の世界では、ある特定の植物に強く依存する種に対して「[植物名] + の + [グループ名]」という形式で名前をつけることがよくあります。
- カエデ:主なホスト(関連植物)
- ヘリグロハナカミキリ:属名(Eustrangalis 属)の基本名
もし「カエデヘリグロハナカミキリ」と続けてしまうと、一つの長い固有名詞として読みづらくなりますが、「の」を入れることで「カエデに集まる、あのヘリグロハナカミキリの仲間」という意味合いが強調され、生態的な特徴が直感的に伝わるようになります。
本種が属する「ヘリグロハナカミキリ属(Eustrangalis)」には、他にも種が存在します。
- カエデノヘリグロハナカミキリ(E. distenioides)
- クロサワヘリグロハナカミキリ(E. anticereductus)
このように、共通のベース名(ヘリグロハナカミキリ)を持つ仲間が複数いる場合、それらを区別するために「カエデに関連するもの」「黒澤博士にちなむもの」といった修飾語がつきます。植物名が冠される場合は、この「の」を介する命名パターンが非常に一般的です。
ところで 、同じカミキリムシでも「ウスバカミキリ」や「ミドリカミキリ」のように、姿形の特徴をそのまま名前にしたものは「の」が入らないシンプルな構成が多いです。一方で、植物との関わりがその虫のアイデンティティである場合、接続詞「の」が登場しやすくなります。

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