フタスジハナカミキリは、日本に分布するカミキリムシ科ハナカミキリ族の一種です。上翅に現れる黒い帯状の斑紋が特徴とされており、個体によってそのパターンには変異が見られます。夏場の山地において、ノリウツギなどの白い花の上によく見られます。



基本情報
| 体長 | 13.6 ~21.1㎜ |
| 分布 | 北海道、利尻島、奥尻島、千島列島、本州、御蔵島、四国、九州、屋久島 |
| 食草・寄生植物等 | マツ科および一部の広葉樹 |
| 成虫出現期 | 6~8月 |
観察と撮影後記
本種は亜高山帯の針葉樹林に生息し、個体数も比較的多く、夏期には訪花する姿が観察されます。上翅の斑紋には、2本の帯が独立する「ふたすじ型」と、斑紋が連結して斜帯状となる「はすすじ型」の二型が知られています。さらに、まれに全体が黒化した個体も確認されます。幼虫は針葉樹の朽木を餌資源として利用し、成虫は山地に生息してノリウツギなどの花に集まります。
学名について
フタスジハナカミキリ / Nakanea vicarius (Bates, 1884)
1.属名: Nakanea (ナカネア)
日本の甲虫学者、中根猛彦(Takehiko Nakane)博士に献名されたものです。本種(vicarius)をタイプ種として、大野正男博士によって1954年に創設されました。
2.種小名: vicarius (ウィカリウス)
ラテン語で「身代わりの」「代理の」「代わりの(substitute)」を意味する形容詞です。命名当時、近縁種である Leptura oblitterata 等の他種との近似性や、それらに「代わる」日本産の種として意識された可能性があります。
3.命名者と年号: (Bates, 1884)
命名者:Henry Walter Bates(ヘンリー・ウォルター・ベイツ)。19世紀のイギリスの博物学者。記載文献: “Longicorn Beetles of Japan.” Journal of the Linnean Society of London, Zoology, 18: 205–262. (1884) ※原記載では Leptura vicaria として記述されました。
和名の由来
最も一般的かつ特徴的な形態が「上翅にある2本の黒斑」であるという形態的特徴に基づいた命名であると推察されます。また、「はすすじ(斜筋)型」という呼称が存在することも、模様の形状(筋)に着目して区別されてきた歴史を裏付けています。
中根猛彦博士の概要
1. 甲虫分類学の権威
博士は京都大学を卒業後、京都府立大学や鹿児島大学の教授を歴任されました。その生涯で記載した新種・新亜種は膨大な数にのぼり、日本の甲虫相の解明において中核的な役割を果たしました。特に、それまで混沌としていた日本の甲虫分類を整理し、現代の分類体系の礎を築いた功績は計り知れません。
2. 代表的な著作
以下の図鑑の主著・監修を務められました。
『原色昆虫大圖鑑 第II巻(甲虫篇)』(北隆館): 1963年の発行以来、長きにわたり日本の甲虫研究の標準的な指標となりました。
『標準原色図鑑全集 第2巻(昆虫)』(保育社): 一般層への普及にも大きく貢献しました。
3. 幅広い研究対象
特に以下のグループにおいて深い知見をお持ちでした。
カミキリムシ科: 多くの新種記載や分類の再検討を行いました。
オサムシ・ゴミムシ類: 日本の複雑な変異を緻密に解析。
クワガタムシ科: 現在のクワガタブームの基礎となる学術的な整理。
ベニボタル科・コメツキムシ科など。
nakanei という種小名を持つカミキリムシは多く、ナカネアオカミキリ(Chloridolum nakanei)などが有名です。
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