初めて見る金沢

ロートルは20代前半に金沢に住んだ事があります。

最近は北陸新幹線の開通とやらで、いわゆる観光地やグルメの紹介をテレビで見る事が多くなりました。

テレビで見る金沢は、それはそれは、素晴らしいところです。

しかし、そこはロートルにとっては、「初めて見る金沢」

でした。

テレビで、見る観光地は、兼六園以外は、「生まれて初めて見る」かのように、華やかで美しく見えます。

また、テレビのレポーターなどタレントが紹介するグルメもそれはそれは素晴らしく、食べてみたくなります。

想いでの地が、華やかで綺麗になる事は嬉しい事ですし、観光客の期待にも応えるためにも必要な事です。だから、それはそれで良いのです。

ただ、ロートルが知らないだけです。特に「食」については・・

先日、関西や関東と異なる「金沢のおでん」が紹介されましたが、ロートルは卵しか食べた事がありません。

理由は値段と栄養価です。

予算、500円で、酒とおでん・・の場合、当然に夕飯としての夜ご飯を意識しなければならず、そうなると選択枝は卵しかありません。

流行ってるような有名なおでん屋には行った事もありません。

当時も観光客を含め、地元でもそれなりの方が多い有名なおでん屋で、「予算500円で・・」は、周りをショボくしてしまいますし、何よりロートル自身が惨めでもあります。

カウンターに座って、「500円で飲ませて・・・」なんて、言えません。

冬の味覚・・・の前に、どうやって、飢えを満たすか・・・が切実な問題でした。

したがって、蟹などの海産物や、名物など、食べた記憶もありません。あえて、言えば、バイトのまかない飯の中に、それらしきものが混入されていた・・感じでしょうか。

ただし、当時は、人口の割合に対し、全国一、飲み屋が多い・・と言われた金沢では、そんなロートルでも行ける飲み屋がありました。

今のスナックや居酒屋とは違い、どちらかの言えば、小料理屋に近いかもしれません。縄のれん・・とは違った印象です。

10席程度で一人で切り盛りしている、そんな店です。

そこでは、500円の予算で、卵を5個と、酔いつぶれる直前までの酒を飲ませてくれました。ときには、他のお客からの差し入れもありました。

余談ながら、この「酔いつぶれる直前」という微妙なタイミングは、この地で学びました。

当時の小さな店には、カラオケなんかありません。もちろん、有線も入っていません。

けれど、白黒テレビやラジオがありました。下宿には、テレビも電話も、何にもありませんでしたから、飲み屋へ行って、プロレスをテレビで見るのが楽しみ・・そんな時代です。

帰り際に、こんな飲ませて貰って・・・と言うと、笑顔で「出世払いでね・・」と送りだしてくれます。

もちろん、・・・未だに出来ておりませんが。

ただし、今になって気付く事は

「あんたの出世払いには、全く期待していないけれど、そう言わないと飲みづらいだろう・・・」

という優しさなんですね。

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