とにかく遺言書を作りたいと考えた場合、一番簡単な方法は次の通りです。
1)実印と印鑑証明書(これが無い場合は自分の写真がある運転免許書等)を用意
土地や建物がある場合は登記簿謄本・固定資産税評価証明を持参する。また預貯金等あれば、それが分かる書類一式を用意する。
2)証人2人(証人がいない場合は公証役場に相談してみてください。紹介してもらえます)を決め
3)公証役場へ出向き証人立会いの上で遺言の内容を公証人に話す4)公証人は話した内容に対し、法律的なアドバイスを与えながら公正証書へ記載
5)記載内容を公証人が遺言者と証人に読み聞かせる
6)遺言者と証人が内容に間違いない事を確認して署名押印する>
7)公正証書遺言書が完成。原本は公証役場に保管され、正本と謄本が交付される
(以上、「公正証書遺言のしおり(日本公証人連合会)からの抜粋」
どうです?
意外と簡単と思われたのではないでしょうか。 2 公正証書遺言書の注意点
1)秘密が漏れないか?
公正証書にこれまで説明したような効果があるのは、言い換えると、遺言者以外の公証人や証人の存在があるからです。
公証人は守秘義務があり安心ですが、証人はどうでしょうか?
公正証書遺言の作成に当たっては二名の証人が必ず必要です。
証人には遺言者の相続人、遺産をもらう人、さらにはこれらの配偶者や直系血族はなれません。そのため、通常は友人や少し遠い親戚がなる事になりますが、何かのきっかけで話す場合も決して無いとは言えないでしょう。
信頼の置ける友人に頼むのが一番ですが、やはり、証人を誰にするかという問題は大きいでしょう。知り合いに行政書士などがいれば、そういった方も守秘義務がありますので秘密は守られます(法律で守秘義務が定められているのです)が、そういった知り合いもいなければどうするか?
証人だけを行政書士等へ依頼するのも一つの方法ですが公証人に相談する事もできます。どこの公証役場でも依頼に応じて信頼の出来る人を証人として紹介してくれます。謝礼金はまちまちのようですが5千円から1万円程度を見込んでいればいいのではないでしょうか。
2)相続人に見られたら
公正証書遺言を作成すると原本は公証役場に保管されますが、正本は自分が保管することになります。
ところが、これが見つかると、しかも、特に見てほしくない相続人に見られると、その時点から大きな問題となるケースがあります。
原本は公証役場にあるのですから、正本を誰かに破られても、または紛失しても問題はないのですが、やはり見つかるとそれ以降、なんとなく気まずくなってしまいがちです。
先ずは絶対に見つからない場所に保管するのが基本となりますが、私は良い場所が見当たらなければ貸し金庫を勧めています。
とはいえ、基本は信頼の置ける人に証人になってもらい、絶対に見つからない場所に隠す事が大事となります。
ところで、遺言書の存在そのものは誰かに伝えておく必要があります。その場合は中身ではなく、「公正証書遺言をつくっているから、万が一の時はどこの公証役場でもいいからそこへ問い合わせてね」と伝えておけばいいのです。それだけで実は十分なのです。
どこの公証役場で作った事がわからなくても、公正証書遺言であれば遺言検索システムで全国、どこの公証役場で作成し保管されているかすぐに判明するからです。
これは意外と知られていないサービスですが、とても便利がものですから活用して欲しいと思います。 3 遺言書作成に当たっての事前準備
必ず必要なものではありませんが、出来れば相談される前の事前準備としてお勧めします。
(1)メモを作る
公正証書遺言は遺言者が話した内容を公証人が法律的な立場からアドバイスを与えながら書いてくれるので、特に文面まで考える必要はありません。
とはいえ、財産とその財産を誰にどう分けるかを事前メモしておいたほうが、自分の思いを確実に伝える事ができます。
時間の余裕があれば公証人にどういった相談をするかのメモでもいいのでまとめておくことを進めます。
メモを書く前の下準備として次の1)から4)を上げておきますので参考にしてください。
1) 自分の財産を箇条書きにする。
□ 不動産の登記簿謄本 未登記のときは,面積や構造(建物)が分かる実測図面など
□ 固定資産評価証明書か不動産の個別価格が分かる納税通知書
□ 預金通帳,保険証券,株券などの債券証書のコピー
3) 財産を与えたい人(相続人)の名前を書き出す
自分と相続人との関係を戸籍謄本で確認します
4) 1)の財産と2)の相続人とを結びつける。もちろん何分の1という分け方も問題なく出来ます。
5) 遺留分を検討する(遺留分については後で説明します)。
6) なぜ、3)のように分けたか理由を書いておく。これを付言事項といいます。
(2)で説明しますが、付言事項についても公証人と相談して遺言状に記載す る事ができます。
(2)付言事項を考えておく
遺言書は基本的には「誰に」、「何を」相続させるかを書いたものですが、遺言書にはそれだけでなく「財産をそのような配分にした理由」や「家族への感謝の気持ち」、「残された家族に伝えたいこと」更に「亡き後の処理のしかた」「葬式や法要の方法」などもを付け加えて書くことができます(このことを「付言事項」といいます)。
この付言事項を書くことによって、残された家族の悲しみを和らげたり、遺産分割に関する要らぬ争いを軽減することができます。
権利意識が高い相続人をある意味、癒す事がこの付言事項で可能となります。
この付言事項には法的な効力はありませんが、遺言者の意思を正確に伝える事ができますし、相続人とっては説得力にある言葉にもなりますので是非、付言事項も残される事を勧めます。
相続人間での遺留分の主張に基づく争いを防止する効果が期待できます。
相続が争族にならないための最後の押さえのような意味合いで考えてもよいかもしれません。
付言事項の記載内容は日公連・清水勇夫著「妻のための遺言」講談社刊が参考になります。
① 遺留分とは
遺留分とは相続人に保障された最低限の権利のことです。遺留分とは、法定相続人のうち兄弟姉妹以外の相続人に認められた、最低限の保障です。 相続人の受ける相続分は、法律上「法定相続分」として一定の割合が定められていますが、一方で法律は、遺言による死後の財産処分を認めています。
遺言者は「全財産を他人の誰々に譲る」という遺言を書くことも可能なのです。しかし、もしこの遺言がそのまま実現されると、残された家族は途方に暮れることになります。元々は遺言者の財産ですから、遺言者の思い通りに処分できて当然という考え方もありますが、そのために遺族が最低限の生活が出来なくなるというのも考えものですし、現実的とは言えないでしょう。
そこで法律は、遺言による財産処分を認めながらも、家族をかえりみないような行き過ぎた遺言による悲劇を防ぐために、一定の歯止めを設けました。それが遺留分という権利です。もともとの法定相続分よりは少ない割合になりますが、遺留分は法的権利として主張することが出来ます。
極端な例かもしれませんが、「全ての財産を愛人へ相続する」といった内容の遺言書を残した場合、残されたご家族は困った事になります。ところが遺留分によって2分の1、救済されるのです。
遺留分の権利者は民法の規定から「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として次の額を受ける」となっております。
従って、配偶者、子・孫およびその代襲者、直系尊属(両親・祖父母など)が、遺留分権利者ということになります。
決して難しい話しではありませんが、間違った判断は禁物ですから不明な点は公証人と相談される事をお勧めします。
② 遺留分を考えておく
遺留分には今、説明した通り、救済という面がありますが、逆に財産を渡したくない人にも遺留分があるので必ず、渡さなければならないことになってしまいます。
例えば、4人家族(夫、妻、子供2人)の場合、全財産を全て妻である配偶者へ相続する遺言状を残してもお子様に遺留分がありますので、お子様から遺留分を主張された場合、全ての財産を配偶者へ相続する事ができなくなります。
この場合、法定相続分(子供2人に対して2分の1の権利があります)の半分である4分の1がお子様の遺留分となります。
この場合、お子様が2人いますのでそれを2人で分けた8分の1がお子様1人当たりの遺留分です。
つまりお子様二人が遺留分を主張した場合、配偶者は4分の3、お子様はそれぞれ8分の1となり、配偶者へ全て相続する事は出来なくなります。
遺留分は主張するかしないかは遺留分の権利のある人の判断ですから子供が権利を主張しなければ特に問題はありません。
しかし、財産がご自宅のみといった場合など分割が難しい場合、遺留分の主張によってご自宅を売却しなければならないケースも出てきます。
遺言書には全ての財産を妻へ相続する内容であっても念のために現金や保険等による準備をお勧めします。
(4)遺言執行者を決めておく
遺言の内容によっては何もしなくてもいいものと、何かしなければならない場合(遺言の執行)があります。
また、その中でも第三者である執行者が必要な場合と相続人が執行する場合があります。遺言執行者とはこの第三者に当たる人です。
認知、相続人の廃除(*)、廃除の取消しは法律上、遺言執行者がしなくてはなりませんのでこういった内容を遺言書に書く場合は遺言執行者を定める必要があります。
それ以外の手続きは相続人で行なえるわけですが、遺贈、寄付行為などは誰か指定していたほうが確実です。寄付行為といえば金銭的なものを思い浮かべると思いますが、金銭に限らず、骨董品などのコレクションを学校や博物館へ寄贈する場合も同じです。
また、相続人の中に非協力的な人がいるため、遺言が執行できない場合もあります。したがって、不動産の売却、債権の取立てや財団設立など、簡単にいかない場合も遺言執行者を遺言書の中で定めておくと良いでしょう。
たとえば、遺言で特定の不動産を友人へ遺贈するよう指定した場合、遺言執行者が決まっていれば相続人が勝手にその不動産を第三者へ相続登記をしてもその登記は無効となります。
自分の遺言に遺言執行者が必要かどうかわからない場合は公証人に相談されることをお勧めします。
また、遺言執行者の費用は遺言の中で報酬を定めるか、或いは相続財産の状況その他の事情によって家庭裁判所の審判で決めてもらう事ができます。費用は相続財産の中から負担できます。
(*):廃除とは相続人の中で自分の財産を相続させたくない人がいる場合に事前に家庭裁判所に申立てて、調停または審判を受けるか、または遺言で行う事ができます。
遺言で廃除するには遺言で廃除の旨を明記し、相続発生後、遺言執行人が家庭裁判所に相続人の廃除の申し立てを行い、審判を受ける事が必要です。
また、廃除するには相続人が暴力をふるったり、侮辱するなどの行為があった場合に認める制度ですので場合によっては認められない場合もあり、注意が必要です。
なお、廃除した相続人は相続人としての地位は失いますが、子供がいる場合はその子供が代襲相続人となります。
4 公正証書遺言書のサンプル
ここでは簡単に公正証書遺言書のサンプルを紹介します。
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